デザインとは: 森美術館で「本質」を堪能する

六本木にある森美術館は、ひんやりとした空間のなか夏のひと時を過ごすにはぴったりの場所だろう。 昨年の夏には、壊れたテーブルや粉々になったポット、大量の紅茶を使い現代の中国の様子を巧みに表現したAi Wei Weiの作品が紹介された。そして今年の夏は、吉岡徳仁氏、篠田太郎氏、栗林隆氏という 3 人のアーティストによる「ネイチャー・センス展」が開催されている。 「日本の自然知覚力を考える 3 人のインスタレーション」という副題が付けられた同展示は、森美術館チーフキュレーター片岡真実氏によって企画された。この展示では 3人のアーティストが、都会の暑さから逃れようとする観客のため、館内で自然の姿を表現しているのだ。
3 人のアーティストのうちの一人、徳仁さんとして知られる吉岡徳仁氏は、デザイナーとして著名だ。だが興味深いことに、徳仁さんの作品はデザインともアートとも評されることが多い。 43 歳の人気デザイナー徳仁さんが、才能豊かな優れたファッションデザイナー三宅一生氏に 12 年間師事していたと聞いて納得がいった。 2008 年、徳仁さんはディレクターとして三宅一生氏が経営するDesign Site 21_21にて『Second Nature』を開催、インスピレーションに満ちた自身の作品を紹介している。そして今回、徳仁さんは長さ 15メートルもある透明な巨大水槽に真っ白な羽を詰め込んだ作品を森美術館に展示している。同展示会で真っ先に目にする作品がこれだ。 巨大な水槽に入った羽は、2 台の送風機で空中へと一斉に吹き上げられる。まるで冬の吹雪を見ているかのように羽が激しい動きを見せる。
展示会開始に先駆け、CNNGo は徳仁さんにお話を伺った。

吉岡徳仁(以下、徳仁): 偶然が生み出す不規則な美しさに関心がありますね。同じものを 2 度と作り出すことも出来なければ、きちんと理解することさえ難しい。まさに自然そのものです。 私たちは自然現象と共に生活しているにも関わらず、生命やそよ風、色、光など自然の美しさが生まれる理由を理解できていません。
そこで、自然現象の本質を調べ、分かったことを新しいデザインやアートに生かそうとしています。 例えば、木の枝や葉に降り注ぐ木漏れ日は、作ろうと思っても人工的に作れるものではないのでそういったことに時間はかけません。 その代わり、偶然が生み出す自然の美と人類のセンスを組み合わせていきたいのです。
CNNGo: 日本における自然観とはどのようなものだと思われますか?また、それが徳仁さんのデザイナーとしての作品にどのように影響していますか?
徳仁: 日本のモノづくりというのは詩のようなものだと思います。 自然観が「モノづくり」という言葉に含まれているように、日本人と自然との間には深く長い歴史があります。 海外の人々は、私のデザイナーとしての作品を特別で非常に日本的なものとして捉えているようですが、重要なのは、人間は自然を決してコントロール出来ないということなのです。 だから人は自然に夢を抱くのでしょうね。
CNNGo: 今回展示されているインスタレーションはアート、それともデザインのどちらにあたりますか?
徳仁: まず、グローバル化など様々な要因により、アートやデザインだけでなく食べ物や科学、その他創作に絡んでくるものは全て同等に語られるようになると思います。 つまり、何がアートで、何がデザインなのかということは気にしていません。モノづくりに携わってはいますが、カテゴリーを生み出そうとしているわけではないのです。 作品作りにおいては、カテゴリーを決めて創作に入るのではなく、思いついたものをそのまま形にしています。
カテゴリーを決めて制限してしまうのではなく、人々に観て欲しいものを作品にしています。 何においても重要なことは、自分の心に響くものを作り上げるということですね。 観ている人々が、私の作品から何かを感じ取ることができれば、その作品がどのカテゴリーに属しているかなどは問題ではありません。
CNNGo: デザインとして関わる携帯電話やその他デジタル機器など新しい消費者テクノロジーについてどう思われますか?
徳仁: 現在、我々は非常に変化の目まぐるしい時代に生き、価値観にも大きな変革が起こっています。 その中で、デザインとクリエーション、つまり、モノを創り上げるというコンセプトもすっかり変わってしまいました。 工業製品のデジタル化に伴い、「物の形」は無くなりつつあります。今では、感じたもの、体験したことそのものがデザインやクリエーションになっているのです。
若い頃はよく物珍しい素材を使って作品を作ろうとしていました。 当時はデザインとはそうあるべきだと思っていたのですね。とにかく新しい素材を使って新しい体験をすることに夢中でした。 けれど、新しいテクノロジーというものは直ぐに風化してしまいます。意見が分かれるところかもしれませんが、真の美しさというのは身近な素材に備わっているのだと思います。 例えば、紙をくしゃくしゃにしたり、破いたりすると美しさを感じるでしょう? 既に存在している素材は、作品をさらに美しくする宝の山のように感じています。
CNNGo: 現在どういった素材に興味がおありですか?
徳仁: 私のデザインは、素材ありきではなくアイデアから始まります。 最終的に作品を完成させるに当たりシンプルなことがたくさんありますが、素材は必ずしもそうではありませんよね。
私のデザインには和食に共通する部分があるかもしれません。 例えば、豆腐は調味料がなくても美味しいのでそのまま食べてしまえるでしょう。 つまり、日本の食文化は素材そのものの素晴らしさを生かしたものだと思うのです。 寿司を作ろうと思えば、包丁を持って魚を切ればよいだけなのです。余分な材料なんていりません。 そして、魚や、貝など素材選びに重点を置くことで海と材料の関係について学び、そして食することでその料理は完結したことになります。このように、私のデザインと和食は似ているといえるでしょう。
「ネイチャー・センス展: 吉岡徳仁、篠田太郎、栗林隆」は森美術館で 2010 年 11 月 7 日まで開催中。
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