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東京ネットカフェ難民の 24 時間

東京ネットカフェ難民の 24 時間

東京のホームレスや家出中の人々、離婚後行き先が見つからない元夫などの避難施設になっているインターネットカフェでの生活とは?
Tokyo internet cafeThese photos unfortunately cannot capture the smell of a place like this: stale cigarette smoke, fried croquettes and body odor seeped into leather. (Photo by Flickr user zeraien)

東京のホームレスは常に眠気に襲われている。 ダンボールハウスでしばしの休息をとったり、山手線を延々と走リ続ける電車の中で居眠りしている姿を見かけることは珍しくない。 しかし昨今では、そんな貴重な睡眠をとることもままならないワーキングプア(ホームレスになることすらある)が増加傾向にあり、2007 年の厚生労働省の調査によると、日本の成人人口の 7.5% を占めるそうだ。

さらに厚生労働省は、その内 5,400 人が仮の住まいとしてインターネットカフェで寝泊りをしていると報告している。 このように、経済的事情から生活維持が困難となり、インターネットカフェを住居として利用する人々(ほぼ男性)は、「ネットカフェ難民」と呼ばれている。

1995 年に初めて東京に登場したインターネットカフェは、今やパソコンと回転椅子が置かれているだけの施設ではなく、 アパートの代わりとして使われているのだ。 1,500 円(ナイトパック料金、または 1 時間 300 円)支払えば、インターネット、ゲーム、DVD、漫画読み放題の個室が手に入り、ドリンクバーまで利用できる。

厚生労働省の調査から、ネット難民の生活に興味を持った筆者は 「睡眠の質」指標を作るべく、新宿の Manboo! 、蒲田の EZcafé 、渋谷の Cyber Café Bagus 、荻窪の Media Café Popeye といった都内 4 ヶ所のネットカフェで 24 時間過ごした。

午後 11 時: Manboo! 新宿南口店

Manboo! には、窓のない、煙たく狭い通路が続いており、小さな個室の前には、靴が並んでいる。 レジの店員が、個室(筆者の希望は、フラットシートの禁煙席)と設定時間の説明してくれた。 利用時間は1 時間につき 290 円。だが、著者は、8«1»時間 1,380 円の「ナイトパック」を選択した。 その時だ。きちんと髭を剃ったジャージ姿の年配の男性が筆者の隣に並んだ。 年配の顧客というのは決して珍しくはないが、客層の大半は 40 歳以下の会社員である。 ちなみに、日雇い労働者は、料金の安い郊外のインターネットカフェを選ぶ。

著者の個室は 男性エリアにある1 x 2 メートルほどの小さなスペースだ。 この場所のどこにネット難民は自分の荷物を置くのだろう? 30 代前半を映像編集者兼 DJ として過ごし、1 年の内何度かネット難民として暮らした経験があるコイケ・ジュンさんは、私物は友人の元に残し、その月々に必要なものだけをカフェに持参するのだと教えてくれた。 まず、店内のカラー照明は消すことが出来ない。 よって咳やイビキ、キーボードをたたく音が絶え間なく聞こえる。 おかげで何度も目覚めてしまった。 マフラーをアイマスク兼耳栓として使おうとしてみたが、うまくいかない。 エアコンのスイッチが入ったままの室内ですっかり脱水状態となってしまった体を癒そうと、遂に起き上がりシャワー室に向かったが、 なんと 1 時間待ちだった。 店員が見せてくれた待ち順リストを一瞥した後、外へ出てみることにした。 だが、新宿の朝は睡眠不足の頭と体にはあまりに目まぐるしく、 2 秒も経たないうちにまたインターネットカフェの個室に戻りたくなってしまった。

Manboo! インターネットカフェ: 渋谷区代々木 2-10-13 サンセイビル 3F 電話:&03-5304-7911、&www.manboo.co.jp

午前 9 時: EZcafé 蒲田店&

新宿の次は蒲田である。 値段の安さからネット«1»難民御用達となっている、蒲田のインターネットカフェは、 余りにも無惨な生活拠点としてメディアの注目を浴びたこともある。 筆者は、最小限の設備ながらシャワーを無料で提供しているマイナーチェーン店、EZcafé に向かうことにした。 ここの8 時間«1»ナイトパック«2»の値段は、妥当とは言いがたい 1,800 円。

Manboo! よりも、個室はかなり狭く(横にもなれない)、照明は巨大な偽物のシャンデリアのせいでずっと明るかった。 同店で睡眠をとるには、ツインシートを利用することが必須であり、実際、筆者がいた時も既に 3 人がツインシートを借りていた。 彼らの個室には漫画本に使いかけの紙コップ、洋服や毛布などが散乱している。 安い昼料金を利用している従業員なのかもしれない。 離婚で家を追い出された人、家出中の若者、そしてネットカフェ我慢体験談を書こうという奇怪なジャーナリストなど、インターネットカフェの利用者は様々。

しかし、深刻なネット難民&にとっては、インターネットカフェを利用する理由は経済事情に尽きる。 コイケさんのネットカフェ難民としての生活は、毎月の家賃の支払いが滞ったときに始まった。 「行く場所はあっただけでもましなんですよ。」と、コイケさんは肩をすくめる。

貧相な設備に明るすぎる店内、遅いインターネット接続にベトベトしたキーボードのある EZcafé のような場所を思うと、そんな言葉が非常に惨めに聞こえてしまう。 厳しい現実を常に思い出したくないのなら、蒲田のインターネットカフェは避けた方が賢明だろう。

EZcafé 蒲田店: 大田区西蒲田 7-66-5 ミヤベビル 2F-4F、 電話:&&& 03-5710-9330、www.ez-cafe.co.jp

午後 2 時: Gran Cyber Café Bagus 渋谷店

180 席の個室を備えるGran Cyber Café Bagusは、国内最大級のインターネットカフェの 1 つである。 その内装には、「難民」の文字はない。 8 時間 1,600 円のナイトパックには、小さな個室ながらも、漫画や雑誌、新聞を豊富に揃えた広い図書館(サイエンスジャーナルが 1 点置かれている)、8 台の自動販売機など膨大な量の無料設備が揃っている。おまけに、ソフトクリームマシーン(もちろん無料)まで設置されているのだ。マッサージチェアは有料( 30 分 150 円«1»)となっている。 パソコンが置かれた単なる個室ではなく、快適さ、充実した設備、メディアを利用できる便利さを重視した Bagus は、 未来型インターネットカフェの原型とも言えるのかもしれない。 Bagus をお勧めするコイケさんによると、特に吉祥寺店が良いそうだ。

午後 3 時まで個室が埋まっていることからも同店の人気が伺える。 他の人々が何をしているのか気になった筆者は、男性エリアを歩きながら、約 150 cm の壁で仕切られた個室の向こうを覗いてみた。 1/3 の人々はオンラインゲーム、その他の 1/3 は、漫画や映画を楽しみ(もしくは両方)、残り 1/3 は、お察しの通り、一人エッチを楽しんでいた。«1»«2»«3»つまり、Bagus は、完璧なまでに快適で満足のいく空間を提供しているのである。 ネット難民としての生活は、実際のところどのくらい大変なのだろう? 「とにかく大変です。もう 2 度としたくないですね。」と、コイケさんは語る。 一番辛かったことは、と聞くと、 「睡眠が満足に取れず、常に疲れているせいで、徐々に正気を失いがちになっていくことです。」と教えてくれた。

Gran Cyber Café Bagus 渋谷店: 渋谷区宇田川町 28-6 三善ビル 6F、 電話:03-5428-3217、www.bagus-99.com/netcafe&&&

午後 8 時: Media Café Popeye 荻窪店

狭い空間と澱んだ空気、睡眠不足に加え、不健康にも無料のコーヒーをひたすら飲み続けた筆者は、眩暈を感じ始めた。 街を後にし、今度は、荻窪のMedia Café Popeyeに足を運んだ。 Popeye は、10 時間のナイトパックが最大 3,000 円と、高級チェーン店の 1 つであるが、さすがに快適さはピカ一である。 日焼けマシンを除けば、店内設備は他のチェーン店と同じなのだが、 個室を含む全ての設備が、もっと快適で広々している。個室には、容易に横になれるスペースが確保されている。 薄暗い店内に流れるジャズの音色で、キーボードをたたく音や、吐息、イビキさえもあまり気にならない。 「睡眠の質」で言えば、Popeye が一番なのだが、 その料金の高さから、本当に安眠が必要な人々には手が届かないだろう。

Media Café Popeye 荻窪: 杉並区天沼 3-2-7 荻窪ルーフ 3F 電話:& 03-5335-0320、www.media-cafe.ne.jp

午後 11 時: 帰宅

ネットカフェの狭苦しい空間で過ごした後、新宿駅から最終電車で家路に着く筆者の目には、いつも見慣れたネオンの明かりがあまりに眩しく、東京が「眠らない街」と称される理由が容易に理解できた。«1»しかし、ホームレスやその他のネット難民にとって、東京は眠らない街ではなく、どんなに眠たくても眠れない街に違いない。

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