『1973 年のピンボール』が英字で復活
Kodansha's English Language Library series prints books in the flimsy softcover used for most Japanese novels.『1973 年のピンボール』は、村上春樹氏の英訳版小説の中では幻のような作品であった。 同作は、村上氏のデビュー作『風の歌を聴け』の続編として発表された 174 ページに及ぶ長編小説第 2 弾で、世界的人気を誇る『羊をめぐる冒険』の前編に当たる作品である。 しかし、これまで英訳版は出版されていなかった。
村上氏のレアな英訳版小説が店頭に登場ところが、1980 年代半ば、講談社が、村上氏の初回 2 作品をアルフレッド・バーンバウム氏の英訳によって出版することを決定した。 この英訳出版は、村上氏の海外進出を意図したものではなく、日本の村上ファンたちの英語力向上を目的としたものであった。 そういった経緯から、 35 ページの英和辞典もどきを巻末に記載した英訳版小説が講談社から出版されたのである。
村上氏が海外でも絶大な人気を博すようになってからは、ほとんどの作品の英訳版として出版されている。 ただ、村上氏の初回 2 作品については、本人の意向により、これまで翻訳出版されることはなかったのである。 そのため、『羊をめぐる冒険』やその他の作品が海外向けに出版されている一方で、『風の歌を聴け』と『1973 年のピンボール』の 2 作品は、講談社から発売となった日本人向け英訳版が存在しているのみであった。
2000 年代初頭の入札競争インターネットで英訳版の存在を知った『羊をめぐる冒険』や『ダンス・ダンス・ダンス』の前編が気になる海外のファンは、インターネットオークションで大金をはたいて、これらの英訳版を競り落とし始めた。 21 世紀前半、eBay における『風の歌を聴け』相場は 25 ドル~ 30 ドルであった。
ところが、『1973 年のピンボール』は、1990 年代に忽然と絶版となった。 この希少性が、オークション価格を 100 ドル~ 200 ドルまで引き上げた。 現在でも、擦り切れた初回版 を 220 ドルで売ろうとする者が居るほどだ。 Amazon Marketplace では、新品同様 に 2,000 ドルの高値が付けられている。
さらには、このレアな作品をPDF からダウンロードして読むことができるインターネット時代ならではの方法も誕生している。
『1973 年のピンボール』の復活インターネットオークションで大稼ぎをしていた人には、残念なニュースがある。 『1973 年のピンボール』は、日本の書店で再び購入可能となったのだ。 『1973 年のピンボール』の需要に気付いた講談社が、再版を決意したのだろう。 現在Amazon Japanでは、 819 円(送料込み)で発売されている。 (かつては 524 円で発売されていたはずだ。 インフレか?)
当然ながら、このニュースは、eBay の相場にも影響した。 再版分の『1973 年のピンボール』は、現在 19 ドル(米ドル)で販売されている。 つまり、利幅はたったの 100% 。
価格が落ち着いたところで、『1973 年のピンボール』のオークション価値ではなく、文学的価値を吟味してみたい。 同作品には、僕と鼠の関係が描かれており、続編『羊をめぐる冒険』を理解する重要なカギを握っている。 また、『1973 年のピンボール』には、後に出版された『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』と同様の、1 つの作品中に 2 つの物語を平行して描くスタイルが採用されている。
『1973 年のピンボール』が 819 円や 19 ドルとなった今、買わない理由はない。
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