貧困に役立つ日本のデザイン
デザインの模型をつくる参加者。テクノロジー開発において世界的に定評のある日本。 とは言え、ビックカメラに所狭しと並ぶ不必要な商品やガジェットを見ればお分かりのように、日本の素晴らしい技術は国内市場へ注力される傾向にあるようである。
NPO Kopernikの共同創設者で CEO の中村俊裕氏は、貧困に喘ぐ人々に役立つ商品を作ることで日本が誇るテック技術を有効利用できるのではないかと考えている。
「国連と共に活動する中で、国際開発のやりがいと機会について実感するのです。(原文英語)」と彼は話す。 「シンプルながらも生活に大きな変化を与えるテクノロジーの導入が、発展途上国にとって大きな課題となっていることに疑問の余地はありません。」
LED ランタンの使用方法を説明する Kopernik の共同設立者の中村俊裕氏。

スピードアップ
とは言うものの、どうすれば豊かな工業国に住む日本人が、貧困に喘ぐ東ティモールの村人のニーズを理解できるというのだろうか?
そんな疑問を抱く方は、是非See-D contestのイベントに参加して頂きたい。発展途上国に関し、日本人参加者の理解を深めることを目的とした同プログラムでは、市場性かつ環境に配慮した有効商品の開発を進めている。
中村氏と、同僚の Ewa Wojkowska 氏が 2009 年に創設した Kopernik は、テックプロバイダーと発展途上国に住むエンドユーザーを直接繋ぐ非常にシンプルなモデルを活用している。
地元の開発団体に向け革新的な商品を紹介している彼らのウェブサイトでは、商品の使い方や普及の仕組みに関し団体が提案できるほか、見込みのありそうな案に対し一般の人々が寄付できる仕組みになっている。

地元の人々の声を訊く
「Kopernik の違いは、テクノロジーに焦点を当て、該当商品を評価することで地元団体、つまりテクノロジーを探している人々が再検討できる仕組みにあります。」と中村氏は話す。
「テクノロジーの有効性に関するフィードバック体系を踏まえることで、Kopernik は地元のコミュニティーや団体に選択肢や意見を述べる機会与えています。非常にシンプルなことですが、国際開発における取り組みのなかでは見落とされがちだと言えるでしょう。」
Kopernik はこの手法により多くの成功を収めているにも関わらず、提供できる商品のセレクションには不満を抱いていた。
そこで開発速度や商品の幅を向上させるべく、今年、MIT の D-Lab 、東京大学の i-school 、その他のパートナーと提携して See-D Contest を立ち上げたのであった。

ゲームの始まり
中村氏の人脈やベテランデザイナーが多く居ることに加え、テック分野での国際開発における強固なしがらみのない日本が、同コンテストの開催地に選ばれた。
Kopernik のビジネス開発スペシャリスト、及び同コンテストのオーガナイザーでもある Shan Riku 氏は、開発経験の全くない人であってもこのモデルを用いて成功できることを証明したいのだと教えてくれた。
See-D は主催者により 3 つのステージに編成されている。
まず第 1 ステージでは、人間中心のデザインワークショップやシンポジウム、また東ティモールへ現地調査に赴くことで貧困生活について参加者の理解を深めることに焦点を当てている。
ゲームは続く
さらに事実上のデザインコンペとなる第 2 ステージでは、多彩な技術を併せ持つチームが新商品を製作する。
クラウドソーシングの概念を取り入れた同ステージでは、主催者がオンラインを利用して、テック知識や地元での経験がある人々にコメントや提案をしてもらうことが可能となる。
最後に、熟成期間とも言える第 3 ステージでは、実際に見込みのあるデザインの商品化に向け Kopernik が該当チームを支援することになっている。
地元組織と Kopernik のネットワークを通し、デザイナーの巨大市場へのアクセスが可能となることで、商品開発の低コスト化を実現する狙いがあるのだ。

チャリティーから商業へ
コンテストのためだけではなく、 Kopernik テックプロバイダーの実際の目標は寄付金がなくても該当商品を普及させることであり、この段階において地元の配給業者がコミュニティーへ直接介入することが可能であると Riku 氏は説明する。
「商品を作る生産者に権限を与えたかったのです。」と彼女は話す。
「すべての出資者に権限が行き渡るよう、Kopernik が市場初の媒体となるよう活動していますが、最終的にはそれぞれが独自のマーケットを作っていけるようにならなければなりません。」と彼女は付け加えた。
クリエイティブに!
9 月と 10 月に開催された同コンテストの第 1 ステージでは、主催者の予想に反し、多くの若者が参加した。

「もともと 30 人の参加者を募っていたのですが、あまりに申込者が殺到したため参加枠を 50 人まで広げました。」と Riku 氏は話す。
「素晴らしい方たちばかりだったので、選考段階では非常に心苦しかったです。」と Riku 氏は付け加えた。
参加者の平均年齢が 30 代前半という実態から、仕事で自身の能力を大いに発揮できず、今回の参加に意気込んでいるのではと Riku 氏は考えている。
「日本の若者は想像性豊かに活躍できる場を探しています。会社では十分なチャンスを与えられていないのです。」
同コンテストの主催者の 1 人で東京大学の博士課程で学ぶヨコタさんもこれに同調する。
「製造業を中心に日本には優れたプロが沢山いるにも関わらず、世界的にみて日本の工業界での力は失われつつあります。そのため、企業側が各従業員にプロとしての能力や経験を十分に発揮させているのかが疑問に思えてしまうのです。」と彼は説明する。
違った分野や経験を積んだ参加者と共に取り組める同プロジェクトでは、洞察感に優れたより良いデザイン開発を目的として、多彩な技能を持つグループによりワークショップチームが構成されている。

私達にできること
この戦略は素晴らしい成功を収めたと言えるだろう。 「少なくとも私にはすべての成果が素晴らしく映りました。正直なところ、私の予想を上回るものばかりでした。」とヨコタ氏は話す。
多くの商品開発が消費者ありきのところからスタートしていることから、生産者は消費者そのものなのだと参加者が感じてしまったほどである。
多くのチームが考え出した未完成で多面性のあるデザインは、地元の人々の手により様々な用途で適応可能なほか、日本で使われている商品からも発想を得て、コストを下げ、現地にある素材を使いながら発展途上国に合わせたデザインに作り変えたチームもいた。
エンドユーザーの問題解決のみに目を向けたのではなく、喜びや楽しさが味わえる商品開発に力を注いだ参加者の取り組みにヨコタ氏は感銘を受けていたようだった。
参加者は単なるケーススタディとしてではなく実際に使う人々のことを考えながらこのプロジェクトに取り組んだのだ。12 月に開催予定の第 2 ステージでは、参加者を含むすべての人々が何を See-D から創出できるのかを心待ちにしているのである。




