マニラの墓地で生きる人々
推計1万人の人々が、墓地を住処としている。
By 文:ディーン M. ベルナルド & ミゲル カンデラ、写真:ミゲル カンデラ 12 December, 2011十分な住居のないフィリピンの首都マニラ。多くの移民者たちは市営墓地という一般的とは言えない場所を選ぶことを余儀なくされている。
中でも最大となる市営北部墓地は、村のような様相を呈しはじめているのだ。
霊廟は死者のむくろを安置するだけでなく、家族の生活の場となっている。 鬼籍に入る人はもちろん減少することはなく、職を求めて外部からマニラへやってくる労働者も増えているため、墓場のスペース不足は日々その深刻度を増している。
マリオ ポーメールズさん(52歳)は数年前に北部墓地へ引っ越してきた。墓石の石工兼墓守という仕事柄、職住近接を求めた結果だという。
彼は墓標をひとつ作るごとにUS$10を受け取るので、場合によっては週にUS$150稼ぐこともある。マニラの通貨に換算すると相当な金額となる。
54ヘクタールもあるこの墓地は、19世紀からあるフィリピン最古の墓地である。1万人もの人々が市営の北部墓地で生活しているといわれている。
歴史上の人物、文豪や芸術家、政治家、戦功の誉れ高い勇者から、歴代大統領まで、彼らはきわめてまっとうな人生を送ったわけだが、彼らの墓石と死体安置所だけは残念なことにそうはいかなかったのだ。

墓場で生きる
霊廟は、飴やイワシの缶詰、袋麺や蝋燭、携帯用プリペイドカードなどを売るショップへと様変わりしている。またある一角では、食べ物や飲み物を供する非公式の小さなレストランまであるのだ。
住民たちは墓地の外壁にかけられた、その場しのぎのはしごを登り下りして大通りへ出る。そこからジープニーに乗って外出するという。
実際、こういった生活スタイルは拡大しており、マニラ地下鉄圏内にある別の墓場もまた、他に決まった寝場所を見つけられない人々の住処となっている。
何年もの間、生きた人間を墓地から追い出すためさまざまな試みがなされているが、どれも功を奏していない。
いったんは転居した家族の多くがまた墓地に舞い戻ってきてしまうのだ。ある者は、転居先は職場や学校、買い物の場所に遠すぎると言い、またある者は、転居先には水や電気の供給が無いと言う。
多くのものにとって墓場は低家賃の転居先よりも、多くの保護を与えてくれるものらしい。墓場の住人はまた、賄賂を支払うと市当局が運営する電線から電気をひくことができる。一部の起業家精神溢れる住民は、消火器からとった水を墓場の住人用へ売りつけてさえいるのだ。
だがお金持ちを対象とした私営の墓場は、今のところそういった問題は無さそうだ。

恐れを知らぬ不法行為
心情的な理由でここに住む者もいる。 数年前に夫を亡くし、子供もなく、ほとんど親戚もないある高齢の婦人は、夫が眠るこの墓場に安住の場を見つけた。
しかし墓場での生活には暗い面もある。
マニラ市営北部墓地内の非公式の村は、薬物取引などの不法行為のメッカとなり、往々にして犯罪の温床となっているのだ。
住民がこれらの不法行為から身を守るすべは無きに等しい。又、彼らは、当局が再び突然強制退去に乗り出してくるのではという恐れと日々戦いながら生きている。
しかし世の中には墓地の住人を邪魔もの扱いする人ばかりではない。毎年10月の最終週、フィリピンはキリスト教ローマカトリックに基づく死者を悼むための休日を迎える。
この期間、死者の親族が祖先の墓のまわりをきれいにするので、国中の墓地が生き返えったようになる。
マニラ市営北部墓地の住民たちは、彼らが我が家と呼んでいる墓地の所有者である親戚の人々に掃除サービスを提供する。この期間の間、ある者は一時的に退去し、またある者は、許されて居続けると言う。
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